時間に追われ、忙しいと、どうしてもおざなりになってしまうのが日々の食事。仕事優先となると、どうしても早く食べられるおにぎりやサンドイッチ、時には栄養補助食品で済ませてしまうなんてことも。また食べる速度も早くなってしまいがちですよね。パソコンに向かいながら、脇目もふらず、適当に咀嚼し、飲み込むように食べる…。もうこうなると「食べる」というよりも、ただ「生きるために栄養補給しているだけ」。こうなってしまうと食の楽しみもなくなってしまい、ますますストレスがたまってしまいそう。実のところ早食いはストレスと深い関係にあり、早食いを止めるだけでストレスが軽減され、さらには心身ともに健康になることもわかっています。今回はそんな早食いとストレスの関係性についてお伝えします。
先に挙げたように、忙しい時は仕事を優先してしまうことから、どうしても早食いになりがちです。日常的に無意識にやってしまう早食いは、百害あって一利なし。健康面でのデメリットは2つ挙がります。
早食いの最も悪い面は「肥満になる」こと。早食いになると、脳内の満腹中枢が満腹を完治するまで時間がかかってしまい、つい食べ過ぎてしまいます。ゆっくり食べていれば、一定のところで脳に満腹サインが送られ、適度な量でストップがかかります。早食いの場合、満腹サインが送られるのが遅いため、気付いた時にはお腹がはちきれんばかりに。これが習慣化してしまうと、常にカロリーオーバーとなり、メタボへの道まっしぐらです。
ゆっくり食べると唾液が多く分泌され、唾液の消化酵素によって食べ物は消化・分解されますが、早食いはほぼ丸飲みに近い状態になるため、唾液の分泌が抑制。そのため丸飲みにされた食べ物は、胃腸で原型に近い状態から消化せねばならず、そのため胃腸に大きな負担がかかってしまい、逆流性食道炎になるリスクが高まります。また腸内環境が悪くなると、体の機能そのものもレベルダウンしてしまい、身体的なストレスも引き起こします。
早食いによって租借の回数が減り、唾液の分泌が抑制されると、口内が乾燥します。それによってウイルスの侵入が容易になり、風邪を引きやすくなります。また口内の乾燥によって、口臭も強くなります。口臭が気になりだすと、人と会うのが嫌になったり、自信喪失してしまうことも。
「たかが早食い」と思いがちですが、こんなにもリスクがあることに驚いた方も少なくないはず。こうした体への影響もさることながら、早食いはメンタル面への影響もかなりあります。私たちの体は仕事モードに入ると交感神経が優位になります。しかしランチなどで食事をゆっくり噛んで食べることで、副交感神経が優位になり、リラックスモードへ。もともと消化管は副交感神経に寄与しているため、租借することで刺激されます。つまり噛めば噛むほど副交感神経が優位になり、リラックスするのです。
こうしたことからもわかるよう、早食いで良く噛まないで食物を食べる人は、休み時間でもリラックスすることができず、常に交感神経が優位にあるため、いっこうにリラックスすることができないのです。忙しいだけでも十分にストレスなのに、食べることでさらにストレスがかかってしまうなんて、これでは全く無意味になってしまいますよね。
忙しいビジネスマンに「ゆっくり食事を」といっても、なかなか難しいことですが、少しでも改善できるための策をご紹介しましょう。
箸をずっともったままにしてしまうと、ついつい早食いになってしまいます。口に食べ物を入れたら、箸を置く習慣をつけるだけでも早食いはだいぶ抑制されます。
おにぎり、サンドイッチ、ラーメン、丼ものなど、手軽に食べられてしまうものは、どうしても「ながら」食べをしてしまいます。「三角食べ」ができるバランスの取れた定食や、お弁当を選ぶようにしましょう。副菜の他、味噌汁などの汁物もあるとなおベターです。
ラーメンや菓子パンは噛まずとも飲みこめるようなものを避け、れんこんやごぼうなどの根菜を使った料理や、玄米など食物繊維が豊富な穀類を選ぶように心がけましょう。特に玄米は副交感神経を優位にする効果があるのでおすすめです。
それでも「早食いしなくては仕事にならない」という方は、通勤・帰宅時間にガムを噛む習慣をつけるといいでしょう。噛むことで副交感神経が刺激され、唾液の分泌も促進されるので、リラックスすると同時に消化促進にもつながります。本来、食事は楽しんで、リラックスするもの。そのことをぜひとも思い出し、日常的にゆっくり食べることを心がけましょう。
エッセイスト、酒ジャーナリスト。全国の酒蔵を巡り、各メディアでコメント、コラムを寄せる。2015年一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外でサケ・エキスパートの育成を行う。
NHK Eテレ、NHK総合他、テレビ、ラジオ出演も多数。近著『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社)がベストセラーとなる。
・HP… http://www.haishi-kaori.com/
・ブログ… http://ameblo.jp/haishi-kaori/
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