「自分のことなんて、誰もわかってくれない」
「こんなに一生懸命やっているのに、評価してもらえない」
「自分なんて価値のない人間だ」
日々、働く中でこんな風に思うことはありませんか?
こう思う方は非常にまじめで、自己肯定感が低く、繊細な方が多いと言われています。かつては女性特有の傾向で、特に専業主婦に多かったのですが、昨今は男性にも急増。ワークスタイルの多様化や、長く続いた不況により、慢性的に心の疲れや不満が蓄積していることも原因の一つといってもいいでしょう。
不満の原因を人に転嫁している時はまだいいのですが、症状が悪化すると自分を責め、どんどん追い込むようになります。いったん負のスパイラルに陥ると抜けるのが難しく、重症になると自傷行為を繰り返す人も。
本来、自分の最大の味方は自分なのに、ストレス過多によって自分で自分を苛んでしまう…。これってとっても悲しいことですよね。こうした症状から逸脱するには「自分褒め」が効果的です。
先に挙げたように、自分の最大の味方は自分。誰かに褒められるのを待ち続けてへこんでいる時間があるなら、いっそのこと自分で自分を褒めてしまいましょう。
といっても、日本人は自分を褒めるのが大の苦手。もともと日本人社会では「がんばること」、「耐えること」が美徳とされてきただけに、自分を褒める=自己満足と認知してしまいがちです。そうならないためのコツをご紹介しましょう。
自己評価が低い人の大半は、目標を自分のキャパシティ以上に設定していることがほとんど。ダイエットを例にとってみても、一カ月で10キロ痩せる、など「それって無茶じゃない?」と誰もが思う目標を設定していたりします。
「目標は高いほどいい」と言われたのは過去のこと。ライフスタイルやワークスタイルが自由化した今は、自分のペースで無理なくできる目標を立てればいいのです。仕事の場合はかえってそのほうが効率が良く、質も上がります。質が上がれば自ら望まなくても、自然に評価されるというものです。
言葉だけ見ると、突き放した言い方に聞こえるかもしれませんが、他者に期待しないことほど気楽なことはありません。
まず認知しなくてはいけないのは、他人と自分は考え方も価値観も違うということ。自分が望むように相手が動いたり、言葉を発することはまずありません。どんなにうまくいっている関係であっても、いつも「阿吽の呼吸」になるわけではないのですから、上司をはじめとする会社の関係者に「褒めて」と期待するのはかなり無理があります。
「評価されたいから仕事する」のではなく、「自分がしたいから仕事をする」という風に考え方をシフトしていくと、腹も立ちにくくなりますよ。
男性の場合、自己評価の対象となるメインの舞台が会社なだけに、日常生活の中で自分を褒めるのは抵抗があるかもしれません。しかし日常生活の中で「自分褒め」を繰り返すことが、自己肯定感を増大させる大きなポイントなのです。
例えば毎日同じ時間に起床して出勤すること。
「そんなこと当たり前だろ?」と思うかもしれませんが、その当たり前のことこそが「褒め」の対象なのです。毎日継続する。これは簡単なようですが、根気がいることです。時には体調不良の時や、忙しくて睡眠時間が十分に取れないこともあるでしょう。それでも眠い目をこすって起床し、身なりを整えて出勤する。勤勉な自分を素直に褒めてあげればいいのです。誰に言うでもなく、心の中で自分褒めをするのですから恥ずかしいこともありません。
料理だっていいのです。料理といっても小難しい料理ではなく、インスタントラーメンだっていい。卵の半熟加減がうまくいったとか、麺を固めに茹でられたとか、そんなことでもいいのです。小さな自分の功績をみつけられる能力を磨いていくうちに自信が付き、ストレスに強いメンタルになります。
褒めることも大事ですが、反省もまた同じくらい大事なこと。一日の中で自分の至らなかった点に気付いたら反省し、どう改善するかを考え、「次はこうしよう」という目標を立てましょう。反省点を加えることで、自分褒めに現実感が生まれ、「単なる自己満足ではない」と認知できるよう変わってきます。
「自分褒め」、どうでしたか?
自己評価の低い方は、どうしても他人と自分を比べてしまい、「自分はあの人よりも劣っている」と思う傾向があります。理想とする自分と、現実の自分とのギャップに落胆し、自己評価を下げてしまうわけです。
最初のうちは難しいかもしれませんが、「自分は自分」とよい意味でのあきらめも大事なことです。どんなにがんばっても他者にはなれません。自分という世の中にたった一人の存在をもっと大切にしてあげましょう。「自分は自分のままでいいんだ」と心底思えることこそが、究極のリラックス法なのです。
エッセイスト、酒ジャーナリスト。全国の酒蔵を巡り、各メディアでコメント、コラムを寄せる。2015年一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外でサケ・エキスパートの育成を行う。
NHK Eテレ、NHK総合他、テレビ、ラジオ出演も多数。近著『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社)がベストセラーとなる。
・HP… http://www.haishi-kaori.com/
・ブログ… http://ameblo.jp/haishi-kaori/
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